木枯らしの吹く夜、たっぷりの熱いお茶ととっておきのお菓子をお供に読書にふけるのも秋らしい過ごし方。そんなシチュエーションにおすすめしたいのが、紅茶とマドレーヌです。20世紀を代表する長編小説のひとつ、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』には、第一巻の冒頭、主人公の少年が紅茶に浸したマドレーヌを口にしたことで、鮮やかに昔の記憶が蘇る名シーンが描かれています。
「私は、そのマドレーヌの一片を浸けてほとびさせたお茶を一匙、機械的に、唇にもつていつた。(中略)瞬間、私は身震いした。何か異常なものが身内に生じているのに気づいて。なんとも言えぬ快感が、孤立して、どこからともなく湧き出し、私を浸してしまつているのだ」(新潮文庫『スワンの恋 Ⅰ 失われた時を求めて 第一巻』プルースト 著/淀野隆三・井上究一郎 訳/1958年)。主人公はある冬の日、紅茶に浸したマドレーヌを食べた瞬間不思議な幸福感に襲われ、その理由を探るうちに昔祖父母の家で叔母にお茶に浸したマドレーヌをもらって食べたことに気づき、そこからかつて過ごした田舎町の記憶が次々と蘇ります。このシーンがあまりにも有名になり、味覚や嗅覚から記憶が呼び覚まされる心理現象は「プルースト効果」と名付けられているほどです。
そんなフランス文学のエッセンスに満ちた“マドレーヌと紅茶”の組み合わせ。小説の名シーンにあやかって、紅茶とマドレーヌを片手に、大長編の『失われた時を求めて』読破に挑むもよし。また、親しい人に会う機会があるなら、プルーストのエピソードを添えて、マドレーヌと紅茶を囲みながら思い出を語らうのも洒落たひとときになりそう。今回は、そんな小粋な時間を演出してくれるマドレーヌと紅茶をセレクト。また、後半では<ジュリスティールームス>の宮脇樹里さんによる、焼菓子とマリアージュで楽しむ紅茶の選び方もご紹介します。お気に入りの茶器を用意して、いざ素敵な秋のティータイムを。
「失われた時を求めて」に登場するのと同じ、貝殻型のマドレーヌ。<ルコント>のマドレーヌはバター、卵、砂糖、小麦粉、レモン果皮とシンプルな材料で丁寧に作られた正統派。甘さは控えめで、レモンの香りがふわりと立ち上る上品な味わいです。
249円(1個)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/ルコント 柱番号C-1
こちらは日本が誇る世界遺産・屋久島で育った紅茶。美しいオレンジ色の水色と、ふっくら芳醇な甘い香りが特徴。すっきりした味わいは、マドレーヌの繊細な味わいを引き立ててくれそうです。
972円(50g)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/日本橋和の茶 伊藤園
焼き菓子に定評のある<アンリ・シャルパンティエ>で、創業時から愛され続けているお菓子のひとつがこの「マドレーヌ」。ふっくらした貝がらの形と、小ぶりなサイズも愛らしさのポイントです。瀬戸内レモン、ラム酒、蜂蜜の香りが爽やかに広がります。
141円(1個)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/アンリ・シャルパンティエ 柱番号B-2
<フォートナム・アンド・メイソン>のロイヤルブレンドは、上質なアッサムとセイロンをブレンドしており、コクがあり蜂蜜のような香りが特徴。蜂蜜を使ったマドレーヌと一緒に楽しむのにぴったり。ぜひストレートでマドレーヌとのマリアージュを味わってみて。
2,160円(125g/インド、スリランカ(セイロン)産)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 新館地下2階/フォートナム・アンド・メイソン
■銀座三越 地下2階/GINZA ティー
口に頬張ればほっとするようなやさしい気持ちになれる美味しさを求めて、こだわりの配合で素材の味わいを引き出したマドレーヌ。はちみつの濃厚な香りと深い味わい、発酵バターにサワークリームを加えたほのかな酸味としっとりとした口溶けがうっとりする美味しさです。
216円(1個)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/ノワ・ドゥ・ブール 柱番号D-3
■銀座三越 地下2階/洋菓子
バターたっぷりのマドレーヌとの相棒には、<ジュリスティールームス>の「JURI’Sアフタヌーンティー」を。ストレートもいいですが、リッチな味わいのマドレーヌと合わせるならミルクティーもおすすめ。マイルドでクリーミーな風味を楽しみましょう。
1,700円(80g/インド産)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/ジュリスティールームス
「紅茶愛飲家の間でも、食べ物との“マリアージュ”という楽しみ方に関心が集まっています。しっかりした甘みやバターたっぷりの焼き菓子の後、紅茶に含まれるタンニンは口の中をさっぱりと洗い流し舌のパレットをリセットしてくれるので、次の一口が飽きることなく楽しめます。お菓子の素朴な風味を生かすならスタンダードなブレンドをストレートで、クリーミーな風味を楽しみたいならミルクティーに。コクのあるアッサム茶に少量の蜂蜜を入れてみたり、レモンのきいたマドレーヌに同じ柑橘系のベルガモットのフレーバーティーであるアールグレイを合わせるのもおすすめです。また、スパイス入りの紅茶は、焼き菓子に含まれる砂糖の甘みと融合することで味に深みが生まれ、新しい印象を味わうことができます。読書の秋、ページを繰る手をとめて、紅茶とマドレーヌをどうぞ。」
FLOOR GUIDE
ONLINE STORE
※価格はすべて税込みです。
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
※品切れの際はご容赦ください。
SHARE
関連記事
繊細な上生菓子や、半世紀以上愛される銘菓「白鷺宝(はくろほう)」でお馴染みの<菓匠花見>。清楚な美しさと心和む味わいに満ちた和菓子は、どのように生み出されるているのでしょうか。そのルーツには、浦和の豊かな自然と、一人の名職人の存在がありました。