新元号「令和」になって、はじめての秋です。日本最古の歌集『万葉集』にちなんだとされるその名にあやかり、日本橋三越本店の各ショップの店長やスタイリストが和歌にチャレンジ! テーマは、心和むひとときを運んでくれる、和菓子や洋菓子などの「いとをかし」なお菓子たち。さらに、日本語の豊かな魅力のひとつであるオノマトペ(擬音語・擬態語)も取り入れます。ご協力いただいたのは、明治大学教授であり、オノマトペ研究の第一人者でもある小野正弘先生。オノマトペや和歌にまつわるお話を伺いながら、各スタイリストの作品を添削していただきました。いざ、「いとお菓子」なオノマトペ和歌の世界へ!
いつもお客さまにご紹介しているお菓子のおいしさを、オノマトペ和歌で表現する。そんなはじめての試みに、やや緊張気味の店長やスタイリストたち。その緊張をときほぐすように、小野先生がオノマトペの魅力をやさしく語りかけます。「オノマトペは、わたしたちの心にいつの間にか深く入り込んでいるもの。例えば机を叩いた時の音を“コンコン”と表すのは、子どもの頃から何度もその表現に触れてきたからです。」という言葉にうなずく一同。「自分の気持ちを音に託した言葉だから“わたしもそう感じる”という共感や実感がわきやすい。オノマトペは、人の心を鷲掴みにするんです。」
「歌をつくるには、詠むべき世界をはっきりさせる必要があります。このお菓子を、どんな人が、どんな場面で、どんな風に味わうのか。それを表すには、どの語句がふさわしいのか。ぜひ想像してみてください。」との小野先生の言葉をヒントに、歌のイメージを膨らませる参加者たち。それぞれの和歌に対しても「要素を盛り込みすぎないで、わらびもちに焦点を絞ってみては」「お芋らしさと、皮のやわらかさを“ホクフワ”と表してはどう?」などの多彩なアドバイスをいただき、どんどんブラッシュアップ! それでは、完成したオノマトペ和歌をご紹介しましょう。
<桂新堂>のスタイリスト・安納さんが題材にしたのは、日本橋三越本店限定品の「ライオンえびせんべい」。グルテンフリーのえびせんべいをライオン像のかたちで型抜きした、日本橋土産にもぴったりな一品です。ケシの実と北海道産の甘えびを素材に使用した風味豊かなおいしさを、「ぷちぷち」というオノマトペと擬人法を使ってユーモラスに表現しました。工夫をこらした一首に、「“かくれんぼ”という表現がいいですね。えびの産地を聞いたときに“なるほど!”と思えるし、食べる人に味わってほしいおいしさも素直に伝わってきます。」と小野先生もにっこりです。
<文明堂日本橋>の店長・中村さんが和歌にしたのは、日本橋三越本店限定品の「焼きたてどら焼」です。ふんわりと焼きあげたどら焼の皮と、皮ごと使用したさつまいも餡の絶妙なハーモニーを「ホクフワ」というオノマトペで表しました。「ホクホクとしたおいもの餡を、フワフワの皮で包んだどら焼のおいしさで、それを味わう家族の幸せも包みこみたいという気持ちが伝わってきます。」と小野先生。味わいの魅力だけでなく、それによって生まれる幸せな時間も表現された一首です。
<かんら日本橋>の店長・鈴木さんは、日本橋三越本店限定の「わらび餅」をオノマトペ和歌に。和三盆糖を使用した上品な甘さが特徴の、<かんら日本橋>自慢の一品です。黄粉と黒みつをかける点に着目し、弾力のあるわらび餅を主役に、味わう前の情景を美しく表現しました。小野先生からは「黄粉を雪に見立てたのがユニーク。わらび餅に焦点を絞ったことで、“ゆたゆた”というオノマトペもより活きてきますね。」とのコメントが。あえて口にする直前の様子を描写することで「食べてみたい!」という気持ちを引き出します。
<ブールミッシュ>の店長・十楚さんがテーマにしたのは、「チョコバナナのパウンドケーキ」。<ブールミッシュ>定番人気のパウンドケーキを、チョコバナナ味にアレンジした日本橋三越本店限定品です。ポイントは、表面にクッキー生地とクルミを散らしていること。「三越の限定品だから“獅子が伝える”なんですね。“しとほろり”とすることで、ただの“しっとり”ではない、口の中でほどけるような印象が伝わってきます。」と小野先生。限られた文字数の中にも、お客さまに伝えたいアピールポイントがしっかり込められているのは、店長やスタイリストがつくる和歌ならではかもしれません。
<パティスリー モンシェール>のスタイリスト・和田さんは、日本橋三越本店限定の「モンブラン生大福」のオノマトペ和歌に挑戦。北海道産生乳を主に使用した、ミルク香るコクのあるクリームと濃厚なモンブランクリームを合わせて、とろけるような求肥で包んだ贅沢な一品です。和歌では、その求肥のやわらかさと栗を使った秋らしい風味を表現。小野先生からは「“ふにふに”という言葉に、求肥の食感がよく表れていますね。思い切って“ふんにり”などにしてみても面白いかもしれません。」とさらなるアイデアも。ひとつのお菓子から多彩な表現が広がるのも、オノマトペ和歌を考える楽しみです。
<ロイスダール>の店長・三枝さんのテーマは、プレーンとショコラの2つの味が楽しめる三越限定の「パイサンド」。バターを贅沢に折り込んだ香ばしい「アマンドリーフ」の間に、なめらかなクリームをサンドした豊かな食感をテンポよく和歌に表しました。「パイのサクサクした食感とクリームが重なって笑顔が弾けるイメージが、リズムよく表現できていますね。」と小野先生。アドバイスをもとにあえて「サンド」などのキーワードを入れずに「ぽってりを」と表現したことで、一首の中に活き活きとした軽やかさが生まれました。
さまざまなアドバイスをいただきながら完成した「いとお菓子」な6首のオノマトペ和歌。参加した店長やスタイリストからは「オノマトペは正解がひとつではなく、いろいろなイメージができるところに魅力を感じました」「この機会に、他の商品でもお客さまとの会話に盛り込めるオノマトペを考えてみたいと思います!」などの感想が飛び出しました。今回ご紹介した6つの味わいも、ぜひオノマトペ和歌と一緒に味わってみてください。そこからまた、あなただけの新しいオノマトペ和歌が生まれるかもしれませんよ!
800円+税(1箱/3袋入)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/桂新堂 柱番号A-5
[販売個数]200点限り
150円+税(1個)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/文明堂日本橋 柱番号B-5
[販売個数]各日50点限り
※各日午後1時からの販売となります。
※9月22日(日)、29日(日)は入荷いたしません。
350円+税(1個)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/かんら日本橋 柱番号B-5
2,000円+税(1本/約13cm)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/ブールミッシュ 柱番号F-1
400円+税(1個)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/パティスリー モンシェール 柱番号D-1
800円+税(1箱/2種×各3個入)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/ロイスダール 柱番号E-2
FLOOR GUIDE
ONLINE STORE
※価格はすべて税別です。2019年10月1日(火)より消費税率が変更されます。標準税率(10%)と軽減税率(8%)が混在しております。※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。商品の情報は予告なく改定、変更させていただく場合がございます。
※記事掲載時点での商品情報のため、お取り扱いのない場合がございます。
※品切れの際はご容赦ください。
SHARE
関連記事
古都・金沢で400年近い歴史を刻む<森八>では、日本三大名菓のひとつである落雁「長生殿」をはじめ、木型を使った和菓子を数多く取り扱っています。さらに、本店に木型美術館を開設し、訪れる人々にその文化を発信しているそう。今回は<森八>の歴史と、和菓子を支える“木型”の世界をのぞいてみましょう。