そもそも「土用」とは何? 夏以外はあまり意識されていませんが、土用は「立春・立夏・立秋・立冬」の前18日間、年4回あります(夏の土用は立秋の前の18日間)。土用とは前の季節のエネルギーがピークを迎え、次の季節へ転じる期間とされています。春夏秋冬に加えて「土用」を設けた背景には、古代中国が発祥の「陰陽五行」思想があります。「陰陽五行」とは、この世界が「木火土金水」の5つの要素で成り立つという考え方。季節もこの5つの要素に対比しており、「春=木」「夏=火」「秋=金」「冬=水」そして「土用=土」。土は万物が生まれては還る場所。「土用」は過ぎ去る季節を終わらせ、次の季節を育む時期というわけです。
「土」の気は「万物の変化と生育を生み出す源」とされ、私たちの暮らしを支える土台そのものといわれています。「土用」は土の気が変化するときなので、引っ越しや家の建て替えなど「大きく土台を替える行為」を控え、心身を整えて次の季節への準備をするのがベター。また、季節の変わり目であり体調を崩しやすいことから、土用の期間にさまざまな食養生が行われるようになりました。丑の日の鰻もその一つですが、さらに長い伝統がある縁起食が「土用餅」です。
お餅をあんこでくるんだ「土用餅」。もともとは宮中で夏の土用の入りの日に、ガガイモという滋養が高い植物の葉の汁を練りこんだお餅を汁に入れて食べ、暑さ負けや病気をしないよう願う習慣がルーツだそう。それが江戸時代に形を変え、餡でお餅をくるむスタイルに変化しました。お餅も砂糖も小豆も、栄養豊富な食材。甘いものが贅沢品だった時代、健康祈願にことよせて食べる土用餅を楽しみにしている人々も多かったことでしょう。
さらに、土用の食には滋養をつけるだけにとどまらず、「夏を無事に乗り切れますように」という縁起担ぎも加わってきます。その一つが「黒いもの」を食べる習慣。こちらも根底にあるのは陰陽五行です。夏の土用は「火」と「土」の気が高まり万物を害する作用が強いため、夏土用(旧暦六月)を示す「未」の反対にあたる「丑」の水の気によって調和を図ろうと「丑の日」にさまざまな健康祈願を行うようになったと考えられています。その「丑」の方角を司る神様「玄武」を象徴する色が「黒」だったため、縁起を担いで黒い食べ物に願いを託したのです。「黒いもの」は鰻、どじょう、黒鯛、ナスなどさまざま。つややかに炊かれたあんこも「黒いもの」のひとつといえますね。
現代は暮らしがどんどん便利になる反面、時間に追われ季節を感じる暇もなく日々を過ごしてしまいがち。しかしいつの時代も変わらないのは、人間の体調や精神は、自然の変化と密接に結びついているということ。先人たちの知恵が詰まった「暦」をちょっぴり意識して、季節と上手に付き合いたいものです。まずは今年の夏土用(7月20日(土)〜8月7日(水))、健康を祈り体を労る食を楽しむことから始めてみてはいかがですか。
まん丸のシルエットが美しい<とらや>の土用餅。餡は風味豊かな黒砂糖を使った黒糖餡です。上品ですっきりした甘みは、夏に食べるのにぴったり。3日間の期間限定販売なのでお見逃しなく。
260円+税(1個)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/柱番号A-5横
[販売期間]2019年7月18日(木)〜20日(土)
[販売個数]各日100点限り
東京都・千住の和菓子店<喜田家>のなかでも特に優れた技術を誇る6人の菓子職人で作られたブランド<KITAYA六人衆>。佇まいも美しい土用餅は、国産小豆を使ったしっとり食感のこし餡でお餅を包んでいます。お餅のやわらかさを楽しむために、冷やさずに常温で食べるのがおすすめ。
160円+税(1個)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/柱番号B-5
[販売期間]2019年7日20日(土)〜27日(土)
[販売個数]各日30点限り
こちらは北海道産小豆のさらし餡に、砂糖、和三盆糖、塩で作った生地を、種(皮)で半円状に包んだ「懐中しるこ」。お椀やマグカップに熱いお湯を注いで手軽におしるこが楽しめます。夏の暑さが厳しい京都では、昔からお汁粉を暑気払いに食べることが多く、和菓子屋では夏でもお汁粉が店頭に並びます。冷たいもので体を冷やしがちな夏、熱いものを食べて体を温めるのは昔から伝わる食養生ですね。
700円+税(3個入)
SHOP INFO
■日本橋三越本店 本館地下1階/菓遊庵
[販売期間]2019年7月10日(水)〜27日(土)
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※価格はすべて税別です。2019年10月1日(火)より消費税率が変更されます。
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