仙台三越がGAGLEへ熱烈オファー。スペシャルコラボソング「千代 ~S.M. 90th Anniv. Edition~」オリジナル ショッピングアンセム 誕生秘話
2023年4月1日に開店90周年を迎えた仙台三越。「ときめき、つづく。」をテーマに、全館で1年間を通して、これまでに見たことのない仙台三越を表現し、様々な”ときめき”を発信し続けます。
90周年スペシャルコラボとして、仙台を拠点に活動するHIPHOPグループ〈GAGLE(ガグル)〉にオリジナルソングの制作を依頼。また、同グループのプロデューサーであるDJ Mitsu the Beats氏に ショッピングアンセム 10曲の制作も依頼いたしました。本コラボレーションを記念し、GAGLEのメンバー3人に楽曲に込めた想いやコラボレーションについて深くお話を伺ったスペシャルインタビューです。
photo by 渡部 光一
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◉楽曲の制作、ありがとうございました。制作の裏側についてお聞きしたいのですが、オファーに対して率直な感想というのはいかがでしたか。
HUNGER:”うわっ”て。笑 全然ネガティブな気持ちじゃなくて素直に驚いた感じですね。三越みたいな百貨店からしたら僕らのことをどう思っているんだろう。って
DJ Mitsu the Beats:うん。本当にやるのって思いました。でも実現したら面白いんじゃないかなって同時に感じましたね。
◉「実際に楽曲を作りましょう」と決まったときの心境はいかがでしたか。
DJ Mitsu the Beats:正直、仙台三越とのコラボというのは想像もしていなかったオファーだったので、「どうなるんだろう……?」と、なかなかイメージが膨らまなかったんです。
DJ Mu-R:僕としてはMitsuさんとHUNGERさんに大きな信頼を置いているので、いいものができるなと確信していましたけどね。
◉Mitsuさんに制作していただいた10曲のショッピングアンセムですが、これまでに百貨店のBGMを作られたことはありますか。
DJ Mitsu the Beats:百貨店は初めてです。
◉仙台三越をBGMでどう表現したいと考えましたか?
DJ Mitsu the Beats:もともと三越にはよく買い物で来ていたんです。店内BGMを聴いていると、意外とバリエーションが豊富で柔軟な印象もあったので、僕が作るBGMもハードではなく、店内の雰囲気に耳なじみのよいヒップホップトラックを作れたらいいなと思いました。要するに、お買い物のワクワク感を邪魔しない心地のいいもの。ピアノや楽器の音色を大事にしつつ、通常僕が作るドラムの強度と比較すると、3割くらい抑えたものにしています。訪れたお客さんには、お買い物中にふと耳に入って、「あれ、このBGMよくない?」と立ち止まってもらうことができたらうれしいですね。
◉「千代 ~S.M. 90th Anniv. Edition~」についてお聞きしたいのですが、楽曲を作るうえで意識されたこととは。
DJ Mitsu the Beats:三越さんから要望をいただいた「仙台三越のイメージを超えたもの」と、百貨店で買い物をする空間で流れるという聴きやすさというバランスを調整することに悩み、わりと時間がかかってしまいました。HUNGERとMu-Rにも何度かトラックを聴いてもらい、その都度アドバイスをもらいながら形にしていきました。
◉悩んでいる姿はどのように見えましたか。
HUNGER:あまり悩んでいるようには見えなかったんですけどね(笑)。
◉「千代 ~ S.M. 90th Anniv. Edition ~」には音楽家として活躍される岩崎太整さんにもアレンジで参加いただいていますが、どのような部分に岩崎さんのエッセンスが加わっていますか。
DJ Mitsu the Beats:岩崎さんに加え、cro-magnonのタクさん(金子巧)にもピアノで参加してもらっているんですが、オーケストラが演奏したストリングスを岩崎さんが構成してアレンジした形になっています。GAGLEでのこの規模感のストリングスを楽曲に採用したのは初めてだったので、すごく新鮮ですね。
◉岩崎さんに対して何かリクエストはされたのですか。
DJ Mitsu the Beats:いえ、基本は岩崎さんに委ねました。予想以上にいいものが出来上がったので、大きな調整はなかったです。
◉それを聴いたHUNGERさんの率直な感想は。
HUNGER :「あ、いけるかも」って素直に感じました。兄貴(※DJ Mitsu the BeatsはHUNGERの実兄)のトラックを聴いて、百貨店で流れている一般的なオリジナルソングではなく、もう一歩踏み込める楽曲に落とし込みたいなとも思ったんです。
◉具体的に「もう一歩踏み込める楽曲」というのは。
HUNGER:仙台三越の社員さんと座談会(※)をする機会を設けていただいたんですが、そのときに“仙台”という街で生きている人と人のつながりの強さを感じたんですね。GAGLEの楽曲として世に残るものであってほしいという思いもありますが、「この曲の制作のおかげで仙台という街をもっと表現できるんじゃないか」と踏み込んで考えることができたんです。
※座談会
2023年2月に90周年プロジェクトメンバーを中心とした仙台三越社員とHUNGERさんの座談会を実施。仙台三越や仙台という街への想い、90周年でお客さまに伝えたいことなどを話し合った。
※座談会の一部風景
◉座談会から曲作りに活かせたことはありましたか。
HUNGER:お客さんとのつながりで生まれたドラマや、仙台三越にまつわる歴史やエピソードを聞き、そこにGAGLEとしての歩みを高い次元でミックスできる曲にしようと決めました。もともとのスタートは仙台三越さんからのありがたいオファーだったんですが、同じテーマでGAGLE単体としての楽曲も作れるモチベーションにつながり完成した曲が、仙台三越90周年バージョンではない「千代」なんです。
◉GAGLEとしての「千代」では地元愛や誇りをテーマにしたGAGLEらしい内容になっていますが、仙台三越90周年バージョンは普段書かれる歌詞と異なる内容も多く難しかったのではないでしょうか。
HUNGER:シンプルに、簡潔に。90周年バージョンはイントロとアウトロ、サビの部分を変えました。制作中、壁にぶつかったときにMu-Rが店主を務めているレコードショップ「Proceed Music Store」が掲げている「Be Proud of Your Home」というモットーを思い出したんですね。Proceedは原町商店街に店を構えていて、仙台三越は一番町四丁目商店街。その共通点を見つけたことで、沼から抜けることができました。
◉「Be Proud of Your Home」が意味することというのは。
DJ Mu-R:仙台三越さんや僕のお店にも、いろんな土地からお客さんが訪れると思うんですね。なので、仙台だけではなく、それぞれが生きている自分たちの街を大事にしようという意味を込めています。ヒップホップにもそういうマインドがあるので。
◉楽曲のフックでは、その「Be Proud of Your Home」が「Be Proud of My Home」と替えられていますね。
HUNGER:仙台に長いこと住んできて、誇りを持ちながら行動している人が増えてきたなと感じることもあり、YourをMyに置き換えています。
DJ Mu-R:地に足を付け、謙虚に自分の街を誇っていく、というニュアンスですよね。
HUNGER:「Home」は家であったり仲間であったり、仙台でもあるという、聴く方々がそれぞれ感じる「ホーム」に置き換えてもらえればうれしいですね。
◉ラップをする面では、どのようなことを意識しましたか。
HUNGER:百貨店のムードを大切にしつつも、GAGLEとしてのモードも表現しなくてはならない。常日頃からレコーディングするときは、マイクの先にさまざまなシチュエーションや誰かを想像しながらラップするんですが、今回は仙台三越の館内や社員の方々、仙台という街全体、仲間たちの顔を思い浮かべながらレコーディングしましたね。
※レコーディング風景
◉MitsuさんはHUNGERさんの書き上げた歌詞を見てどう感じましたか。
DJ Mitsu the Beats:何も言うことがありませんでした。楽曲に対する自分のイメージを含め、バッチリはまりましたね。
◉最後に、仙台三越90周年とのコラボにメッセージをお願いします!
GAGLE:仙台三越さんからのオファーで「千代 ~ S.M. 90th Anniv. Edition ~」を制作し、その過程でGAGLEとしての新曲「千代」が生まれるきっかけにもなり、グループとしての方向性も考えられる本当に光栄な機会に恵まれたと感じています。大事に届けていきたいと思います。
【Profile】
GAGLE
HUNGER/DJ Mitsu the Beats/DJ Mu-Rの3人からなるヒップホップグループ。1996年に結成し、2001年にEP「BUST THE FACTS」でデビュー。その後、日本語ラップ・クラシックとして知られる「雪ノ革命」「屍を越えて」「うぶこえ」を生み出し、時代とリンクしながらも唯一無二のスタイルとライブパフォーマンスで、地元を中心に厚い支持を得ている。
岩崎太整
音楽家。代表作に 映画『竜とそばかすの姫』、映画『モテキ』、『巨神兵東京に現わる』、アニメ『血界戦線』シリーズ、アニメ『SPRIGGAN』、アニメ『ひそねとまそたん』、Netflix『First Love 初恋』、Netflix『全裸監督』シリーズなどがある。 その他にも、第86回 NHK全国学校音楽コンクール 高等学校の部課題曲『僕が僕を見ている』など。 映画『モテキ』で第35回日本アカデミー賞 優秀音楽賞を受賞。 映画『竜とそばかすの姫』で第45回日本アカデミー賞 最優秀音楽賞を受賞。 映画『竜とそばかすの姫』で第36回日本ゴールドディスク大賞 サウンドトラック・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞。
金子巧
cro-magnon (Jazzy Sport)の鍵盤担当。0歳からピアノと触れ合い、1996年にジャズ・ピアニストを目指し渡米。帰国後、一転してヒップホップやダンスミュージックを経て、2013年にピアノソロアルバム『Unwind』 をリリース。ソロライブと並行してライブの客演や制作協力、セッション等活動は多岐に渡る。2017年にはDJ池田正典とチルアウト・プロジェクト〈Coastlines〉を始動させ、2019年に1stアルバム『Coastlines』、昨年2022年4月には2ndアルバム『Coastlines 2』をリリースしている。
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