美術

大槻香奈展「"STAY HOME"と蛹の時」

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2020/12/20 UP

「"STAY HOME"と蛹の時」

 

2007年の作家デビュー以来ずっと、私は日本の中心のなさ(空虚さ)と向き合ってきた。その中空構造で空っぽな実感を「から」と呼び、自身の制作テーマとしてきた。「から」は単に「空」っぽの意味だけでなく、そこから何か生まれるかもしれない卵の「殻」のニュアンスも含んでいる。これまで、その概念は「蛹(さなぎ)」として説明されることも多かった。(蛹は蝶を生むための卵である、という考えによるもの)

 

つねに私の制作への興味は「確固たる中心を持たずして生きている私達の精神が、いったい何によって支えられているのか」という問いと共にある。それを紐解くために、あるいはその空虚の形を確かめるようにして、これまで作品制作をしてきた。

 

-

 

私がデビューして最初に絵画のモチーフとして採用したのは「少女」である。それは日本の幼さを象徴するものとして、また自身が少女時代に抱えていた日本的生き辛さ(大人になれなさ)が動機となり、感情移入があって向き合ってきた。大人として振る舞うことが困難な場所で、それでもこれから大人にならなくてはならない世知辛さが、私に何枚もの「少女」を描かせた。

 

今回の個展では過去作品から最新作まで、これまで描いてきた「少女」作品を展示する。2020年、コロナにより自由を奪われ、現実が"STAY HOME"の日常になったとき、それは私にとって蛹(さなぎ)の時間のように感じられた。私たちは"STAY HOME"によって「家」という蛹の殻に包まれ、コロナによって変わってしまった世界に適応するため、生存戦略を変えるために自らの身(価値観や固定概念)を溶かし、蝶に変態するまでじっと待つこととなった。それは何にでもなれる可能性をもった思春期の「少女」のように。こう書くと未来を輝かしく思うかもしれないが、生まれ変わることはたいてい容易ではなく、当然のように苦しみも伴うだろう。しかし人間である以上、そのような現実でも希望を見出したいと思う。

 

自由を奪われたこの世界で、次に自由になる時にはどんな世界を望むだろうか。蝶になる前、蛹の時間を過ごしながら、いま何を思うのだろうか。不自由なこの世界で、未来についてゆっくり考えを巡らせるための作品を選び、ここに展示する。

 

大槻香奈

 

 

【略歴】

2007年に[美術作家・イラストレーター]の肩書きを持ち、作家活動を開始。その後、現在に至るまで毎年、国内外で個展やグループ展を行う。同年『RESONART』りそな銀行の宣伝ビジュアルを担当。初個展『再生回路』(digmeout ART&DINER)を開催し、少女モチーフを中心に絵画作品を発表する。

 

2011年には 3.11 をテーマとした大規模個展『乳白の街』(neutron tokyo)が話題に。その後、2012年『みんなからのなか』(neutron tokyo)、2014年『生処に帰す』(The Artcomplex Center of Tokyo)と、震災以降の日本の情景を蛹(さなぎ)的に捉え、少女モチーフと共に、人や街が生まれ変わることについて絵画制作を行った。ほかにも立体作品など、平面に拘らない形での作品展開を始める。

 

2013年より書籍の装画『暗黒女子』(秋吉理香子著)、『クリュセの魚』(東浩紀著)などを担当。またCDジャケットイラストなど、イラストレーターとしての仕事を多数手がけるようになり、今を象徴するイラストレーター150名が集結した『ILLUSTRATION 2013』『ILLUSTRATION 2014』『ILLUSTRATION 2016』に掲載された。

 

2014年より毎年、グループ展のキュレーションを行うようになる。2016年には現代の死生観を中心に、その周辺の揺らぎを捉えたグループ展『揺らぎの中のせいとし展』(創治朗)を開催。同年、イラストレーターとしては『星へ行く船』(新井素子著)完全版・シリーズ装画を担当している。

 

2016年から現在に至るまで、大槻の表現する蛹的テーマは、「少女」モチーフから「家」「山」「日本人形」と緩やかに形を変え、現在はそれらのモチーフに加えて「光」の概念が加わり、自然光の与える精神的影響と共にみえてくる日本的モチーフの捉え直しを行なっている。

 

現在、嵯峨美術大学客員教授。

画像

「暇を描く」

2020 年

65.2×91.0cm

パネル・アクリル

※数量に限りがある商品もございますので、品切れの際はご容赦ください。

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