美術

大平龍一「pineapple」

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2020/06/29 UP

大平龍一は、1982年東京都生まれ。東京芸術大学大学院にて博士号(美術)を取得。現在千葉県を拠点に制作活動を続けており、木材を使用した彫刻を中心に、様々な形態で作品を発表しています。大平は近年、Rhizome (リゾーム)根茎という意味であり、現代思想の、「相互に関係のないものが、横断的な横の関係で結びつくさまを表す概念」について、作品を通した研究発表を行っています。本展では、花や静物、人間や車など、美術の世界でもオールドスクールなモチーフを逆さまに彫り出した新作シリーズ“upside down” 30点余りをはじめ、4mの大木から彫り出した鑑賞者が乗ることのできる大型の“vehicle”シリーズなどを発表予定です。大平待望の新作が投げかける、本展覧会のタイトルでもある、pineapple(パイナップル)から拡がる新たなRhizomeの形成と、来たるべき新しい世界との関わり方を、この機会にぜひご高覧くださいますようお願い申しあげます。 

 

【展覧会に寄せて】

 

わたしは展覧会に際して文章を書くことはあまりない。この展覧会「pineapple」の開催前、会場下見でここへ来た折りに梅津庸一のキュレーション展「フル・フロンタル 裸のサーキュレイター」を観た。その展示内容とステートメントに触れ、展覧会に際して文章を書くことについて考えるきっかけとなったので書き連ねている。ほぼ箇条書きなので長い割に稚拙な文章に疲れるかも知れないので、読み疲れたら途中で諦めて作品だけ見て欲しい。

 

そもそもわたしは何かを見に行った時、一つ一つ解説を聞くのが苦手な方だ。私なりに勝手に解釈反芻するから黙って見させてくれと思ってしまう。上記、梅津氏の展示でも、とてもありがたいのだが、会場を一周する前に梅津氏と三越の方が丁寧に解説してくれたが、面白さ反面、煩わしさ反面であった。まずは自分でこの展覧会の世界を味わいたいと思ってしまうのだ。しかし聞いてみると納得することや知らないこと、鑑賞の深みが増すことはもちろんある。自分のタイミングで情報を得たいという身勝手な性分だ。

 

これは洋服を選ぶときやショッピングでもそうで、話しかけられ勧められるのが苦手で、静かにじっくりモノを自分の感覚で見させて欲しい派だ。その裏側にどんなすごい技術や物語があろうとモノとして欲しくなければそれはどうでもいいことだ。誰かにこれはすごいとか価値があるとか面白いと強要されるのが嫌なだけなんだと思う。誰かが勧めてくるものはすでにそこにフィルターが一枚かかってブランド化しているように感じてしまうからだ。例えばそれが自分の家族であれ、どこか知らない山田さん?や佐藤さん?であれ。山田ブランド、セレクトショップ佐藤のオススメみたいに感じてしまう。やはりわたしが少しひねくれているのかも知れないとこの文章を書いていて思ったが。それでもクリアに前情報無く、モノゴトと対峙したいという思いがいつもあるのだ。しかしそのモノにまつわるストーリーや付随する情報でモノを購入することもある。友人がやっているブランドの服や作品。買うことで社会に貢献できるモノなど。情報がそのモノを補完することが多々あることをわたしも知っている。

 

そんなわたしは現代美術の解説ほど野暮なものはないと基本的に思っている。美術の企画展覧会を見に行くとステートメントやその展覧会についての熱い想いみたいなものが展示の前や途中にあり、キュレイターの(勝手な)解釈で好き放題語られている。この文章もここにこうして貼られているのだが。まず作家が語るステートメントとキュレイターが語るステートメントは明確な違いがあると考えるので、そこについて話したいが長くなりそうなので別の機会にするが、ステートメントは作品や展示のコンセプトを明確に記載し、その意図をそのままに伝えることができる重要なものではあるが、同時に、観覧者に作品に対する特定の価値観(作家の価値観)を植え付けてしまうこともある。しかし、作家がはっきりとしたテーマを提示したとしても、そのテーマの捉え方や価値観は各々違うため、作家の意図したストーリーからは変化してしまうこともある。わたしはアートは、価値観を開くものだと考えているので、このステートメント上でテーマを語る、探る、ということに対し、疑問を感じていた。

作家が何気なく作る作品には、作家の日々の思考、その時の感情や影響されたものなどが素直に反映されている。したがって、作品群の繋がりは、はからずも出来てゆくものであり、あえて括る必要はないのではないかと考える。作家は思うがままに日々制作をし、観覧者は各々の価値観で、作品を解き、共感できるものを見つけ持ち帰る。この、アートに対する非常にシンプルな根源的考えで良いのではないかと近年考えている。

 

さて、前置きが長くなったが本展覧会「pineapple」について作家自身がキュレイターなので好き放題、前置きより短めに書いてみる。

この展示は大平が2019年に池尻大橋にあるギャラリー月極で開催した「Rhizome」展覧会の続編といえるものだ。Rhizome (リゾーム)は根茎という意味であり、現代思想の、「相互に関係のないものが、横断的な横の関係で結びつくさまを表す概念」としても知られる。リゾームについてはわたしも哲学者ではないし、実際にはそこまで詳しくないのでこれを鑑賞している人も自分でググってみてほしい。詳しくないのに展覧会のタイトルにしたのは今これについて研究すべきだと感じたからだ。近年、情報技術とコミュニケーション手段の発展により、24時間、誰とでも連絡ができるようになり、その心理的影響の一つとして、人々が繋がりを強く求めるという傾向が伺える。それは、美術の世界にも影響を及ぼしている。芸術作品を前にし、多くの人は、作品の意図や意味についての情報を求め、その情報から、作品と自分、作家と自分、作品と作品など、あらゆる繋がりを模索する。上も下も無く水平でクリアな空間に膨大な情報が漂う世界となった。昨年、東京オペラシティ アートギャラリーでも開催されたカミーユ・アンロ「蛇を踏む」に出品された作品《青い狐》は文学、哲学、美術史、天文学、人類学、博物学、デジタル化された現代の情報学など多岐にわたる膨大なリサーチが生み出した壮大なインスタレーションで、まさに情報の海に漂う体験ができる展示だった。この文章を書くきっかけになった梅津庸一のフル・フロンタル 裸のサーキュレイターもまた、日本の美術をめぐる情報の海で、拾った貝殻を並べ語り合える場となっていた。まさにリゾーム的な世界の捉え方を時代がしているのだと感じたのだ。

 

わたしたちの目に見えるものの背後には常にそれを支える膨大な情報がリゾームとなって拡がっている。これからわたしたちが歩んでいく世界において、どのリンクをクリックし保存し、繋げていくのか。本展覧会は、その終わらないプロセスへの想像力を引き出すための実験装置なのだ。 

とかなんとか長々書いてしまったとさ。

 

2020年6月20日(市川にて)大平 龍一

画像

作品名:upside down / pineapple

サイズ:H21cm

税込価格:176,000円

画像

作品名:upside down / amphoriskoi

サイズ:H21cm

税込価格:176,000円

画像

作品名:upside down / fishing rod

サイズ:H16cm

税込価格:176,000円

※数量に限りがある商品もございますので、品切れの際はご容赦ください。

※価格はすべて、税込です。

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