工房探訪
2019年8月14日にリフレッシュオープンしたパーソナルオーダーサロンでご紹介する様々なブランドの工房を訪れることによって、様々なブランドのモノ作りに対してのこだわりや想いを伝えていくこの企画。
今回は番外編として、年に2回、紳士雑貨売場にてオーダー会及び即売会を開催している〈文二郎帽子店〉の西川文二郎さんを訪ねました。
場所は大阪、日本最古の官寺として有名な四天王寺のすぐ近くに〈文二郎帽子店〉はありました。
〈文二郎帽子店〉
大阪市天王寺区上汐6-1-1
TEL:06-6796-8070
定休日:月・火
レトロな印象の店構え。
出迎えてくれたのは「西川製帽」代表でありながら、〈文二郎帽子店〉直営店の店主でもある西川文二郎さん。現在は店頭に立ちながら、後進の指導・育成に勤しんでいるとのこと。
そんな文二郎さんにお話を伺いました。
――〈文二郎帽子店〉を立ち上げたきっかけを教えてください。
ブランドは20年前に立ち上げました。それまではOEM(下請け)をやっていましたが、徐々に注文が少なくなってきて、いっそのこと技術もあるし、ブランドを立ち上げてやっていこうと。もともと〈文二郎帽子店〉、〈BUNJIROW〉のブランド名はブランドを立ち上げる前から決めていました。
――帽子作りに携わるようになったきっかけはどのようなことからでしょうか?
18歳の時、高校を出て、家業を継ぐことを決めていましたので、なんの疑いもなく、すっと入りました。しかし実際に入ってみると、周りは高齢の職人さんばかりで話がかみ合わず、続けていけるのか心配でした(笑)。
――もともとご実家が帽子屋さんだったのですね。
初代の西川仁平(にへい)が明治27年に創業しました。ハワイで帽子作りの技術を習得して神戸の元町でお店を開いたそうです。私が四代目です。
――モノ作りで一番大切にされていることは何ですか?
基本に忠実であることです。それをずっと守り続けています。また、素材は天然物にこだわっています。
――ブランドを立ち上げる前と後で変わったことはありますか?
パナマハットやソフトハットなどオーソドックスな帽子をかぶることが増えました。長年帽子作りに携わってきましたが、実際に本格帽を愛用するようになったのは50代になってからです。その後10年くらい経って、自分に合う型がようやく決まりました。最近はセンタークリースハットなどを良くかぶっています。
――帽子のスタイルで参考にしているものはありますか?
1930~1950年代の映画を見て参考にしています。あと、ジャズやブルースなどのブラックミュージックが好きなので、そういったファッションも参考にしています。
店内のいたるところにある帽子モチーフのポスター
――どのようなお客さまがオーダーされることが多いですか?
お店を立ち上げて4年くらい経ちますが、全国の百貨店で開催するオーダー会のお客さまやインターネットで注文される遠方からのお客さまがご来店されることが多いです。
それと近所の方も多いです。ちょうど店の目の前が信号なので、信号待ちで停車した時に目に入って、気になって後日ご来店されるというお客さまも多いです。
――お店を立ち上げたきっかけを教えてください。
5年前、大病して、ちょうどその頃、娘婿のワハブが手伝ってくれていたので、任せようかと。でもまだまだ引退はしたくなかったのでお店を開きました。もちろん、帽子作りの指導は引き続き行っています。
――これからのモノづくりでチャレンジされたいことはありますか?
帽子を好きな方は本当にたくさんいます。多くの帽子好きの方に〈文二郎帽子店〉のことを知って欲しいと思っています。そのために娘の綾と、娘婿のワハブに新しいブランドを立ち上げてもらいたいと思っています。若い人にかぶってもらえるようなブランドを作って、将来は〈文二郎〉ブランドを買って頂けるようになれば私も嬉しいです。
西川製帽4代目の西川文二郎氏(左)と5代目の西川綾氏(右)
――インスタグラムのアカウントも立ち上げられていますね。
娘の綾が始めました。ホームページではブログを始めていたのですが、「文二郎さん元気?」というお客さまが多いらしく、近況報告も兼ねてやっています。
――これから帽子に挑戦しようかなと思っている方にアドバイスをお願いします。
帽子は似合わないと思い込んでいる方も、まず挑戦してみてください。本格帽であれば、必ず似合う型は存在しますし、帽子はかぶっていると徐々に似合ってくるものです。年齢を重ねると共に似合ってくるということもありますしね。
――帽子選びにおいてのポイントは何でしょうか?
帽子選びで一番重要なのは「サイズ」です。知識と経験がある販売員の方からアドバイスを受け購入すれば間違いありません。
あと、「バランス」も重要です。例えば身長があまり高くない方であれば、ツバの小さいものをおススメします。入門編としてはツバが5cmくらいですかね。
それでも似合わないと思っている方には「帽子とヒゲとメガネ」の3点セットをおススメします。
店舗の入り口にも「ヒゲ」のマークが。
その後、タクシーで10分ほどの場所にある工房にも伺いました。
8月某日。この日は最高気温30℃を超える真夏日。工房内の気温は40℃に達します。
西川文二郎氏より帽子作りを引き継いだ娘婿のワハブ氏。(ガーナ出身)
製作工程① ~ プレス
金型をセットし、帽体に高温の蒸気を当て柔らかくした後、金型に入れ、成形する。帽体の状態によって異なるが、3回ほどこの作業を繰り返す。
サイズ、帽子の型ごとに異なる金型が多数存在する。
金型に帽体を入れ、成形している様子。
製作工程② ~ ブロッキング(フェルトハットのみの工程)
プレス同様に高温の蒸気を当て、フェルトを柔らかくし、帽子の高さを調整します。
製作工程④ ~ ビン革を付ける
ビン革とは帽子の内側のおでこが当たる部分のこと。関東では一般的に「スベリ」と呼ばれる。
製作工程⑤ ~ ツバを仕上げる
予め小石が入った重石を熱し、帽子に押し当ててツバ(ブリム)の型を整える。
ツバが変わると帽子の表情は大きく変わる。
製作工程⑥ ~ リボンを付ける
リボンを縫い付け完成。
イベント情報
〈文二郎帽子店〉オーダー会
9月7日(土)10時00分~19時00分
9月8日(日)10時00分~18時00分
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